HEMLOCK‐ヘムロック‐
 チェスとは、白と黒の市松模様の盤上で、互いに駒を操り、相手のキングの駒を取るゲームである。
そのルールは殆ど将棋と一緒で、“西洋式の将棋”と言っても過言ではない。

 灰仁と何度も将棋を差し合った界にとって、アイリーンからのチェス対決の申し出は、決して不利なものではなかった。

 チェスボードに白と黒の駒がルール通り並べられ、闘いの準備は滞りなく整った。





カタン。


 チェスは黒い駒が専攻と決まっている。

言葉が無くとも、界がポーンの駒を2コマ進めるのが開始の合図となった。


カタ。


 アイリーンもポーンを進める。
チェスは、2列に並ぶチェス駒の最前列にあるポーンを動かす事から始まる。

ポーンは前に1マスしか進めない最弱の駒だが、最初に動かす時だけ2マス進めても良いと言う決まりがある。
また、駒列の前線全てを担うのもポーンであり、駒の中で1番数を占める駒だ。

 最弱な駒ではあるが、どの列のポーンを1マス進めるか2マス進めかで、後列のルーク、ビショップ、ナイト、クイーン、そしてキングの動かし方も変わって来る。

 界とアイリーンの頭脳戦はこの時既に火蓋を切っていた。
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