HEMLOCK‐ヘムロック‐
『は? イヤ、俺は違……っ』
いきなりの出来事に、正直、界の頭でも今何が展開されているのかよく分からなかった。
少なくとも界のプランの中に“ランディがベンジャミンを人質にとって乱入してくる”
と言ったものは無かった。
第一、界は先程までベンジャミンがポセイドンと言う事実を知らなかったし、ポセイドンの話をランディとした覚えも無い。
『ベンを脅せば、私が「HEMLOCK」のデータを渡すとでも思った訳!? ランディも! コイツの作戦にこんな形で手を貸して……、本気で紅龍會を裏切る気なの?』
『解んねぇのか? アイリーン。状況は変わってきてんだぞ? イオが日本に「HEMLOCK」を持ち込んでから、徐々に紅龍會も外から嗅ぎ回られてる』
『そんな事、研究員の私が知らない訳ないでしょ。一体何が言いたい訳?』
『これ以上「HEMLOCK」に関わり続けたらヤバいって言ってんだよ! ……イオはこうなる事も分かってて敢えてクスリをバラ撒いたのかもしれないな。
イオも俺も、お前を紅龍會に置いておきたくないっつってんだ!』
アイリーンとランディのやりとりを聞いても、界には場の展開も空気も全く掴めない。