HEMLOCK‐ヘムロック‐
 自信満々の彼を前にして、界もアイリーンも、もちろんベンジャミンですら一言も発する事が出来なかった。

ただ1つ、界が確信した事――。

(ランディが絡むと……、絶対計画通りに行かない)


 界の残念過ぎる表情から、心情を読み取ったアイリーンは一瞬労しい気分になったが、すぐに険しい顔付きに戻った。


『ここまでだったわね。伯方 界。私もベンもあなたにデータを渡す事は無い。
ランディ、いい加減に銃を下ろさないと、これ以上の事は私でも上に黙ってられない』

『まだ分からねぇかアイリーン! この先「HEMLOCK」と紅龍會の繋がりがバレて、真っ先に組織に切り捨てられるのは開発者のお前だぞ!?』


 ランディはランディなりに真剣に銃を構え直した。
どうやら“アイリーンを紅龍會から抜けさせたい”と言う点では、彼と界の目的は一致しているらしい。


『組織にとって「HEMLOCK」は財源であると同時に、裏社会から狙われる材料でもある両刃の剣だ。紅龍會がそれを持ち続ける事が必ずしもプラスになるとは限らねぇんだ』

『あなたが知らないだけよ。「HEMLOCK」だけが紅龍會のライフラインって訳じゃ……』

『それ以上はいい。アイリーン』

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