HEMLOCK‐ヘムロック‐



「新宿というのは違和感が無いが、問題は頻度だな」

「鬼竜組の幹部の目撃情報も、今週は新宿がやけに多いです。もしイオを追った紅龍會の者が既に日本に来ているとしたら、やっぱり新宿に潜伏してるんでしょうか」

「有り得るな。城戸は歌舞伎町でHEMを捌いていた」


 礼二は未だにイオの事を城戸と呼ぶ。どうやら癖になってるらしいが、本人はあまり直す必要性を感じていない様。


「もし泉を誘拐する事が目的で新宿に集まってたなら、泉が新宿の何処かに拉致されてるって可能性は?」

「だとしたら詠乃君の情報網に引っ掛からない訳が無い」

「その事なんですが、詠乃さんくらいの人でも紅龍會と鬼竜組の関係は知らなかったんでしょうか……?」


 透がそう思うのも無理はない。
紅龍會と鬼竜組の繋がりを掴んでいたなら、今回の事態は未然に防ぐ事が出来たかも知れない。
もっとも、まだ鬼竜組が誘拐実行犯とは確定していないが。


「いや、勿論彼女は知っていただろう。だが、その関係だけでこの件と絡めるのは無理矢理過ぎる。彼女だって万能ではないんだ」


 ハッキリと言い切った礼二を透は少し感心した。と同時に羨ましい気持ちが生まれるのも実感していた。


「礼二さんと詠乃さんは強い信頼関係があるんですね」


 それは、思わず出た透の羨望の言葉だった。
< 334 / 343 >

この作品をシェア

pagetop