HEMLOCK‐ヘムロック‐
「イオがいきなり興信所に来たあの時、礼二さんと詠乃さんが一緒に駆け付けてくれて……、正直カッコイイって思いました」
礼二は突然の透の発言に驚いた様だった。元々彼はあまり感情を顔に出さない為、正確には分からないが。
「俺は……、駆藤に、界とそういう関係を築いて欲しいと思ってる」
「え?」
いきなり驚く役が交代する。透は焦った。そして申し訳なさそうに俯く。
「でも俺は、実を言うと界の事を最後まで信じてやる事が出来なかったんです」
それは界が中国に行く前日、彼と言い合った時の事を言っていた。
あの時界をもっと信用していれば、彼の透達への思いやりくらいは気付けていたかも知れない。
透は今でもそう後悔していた。
「信頼されてから信用するのは、遅いのか?」
礼二の問い掛けに思わず顔を上げた。
以前までの透なら彼のこの静かな視線を、感情の欠落した恐ろしい物と感じたかもしれない。
「少なくとも界は君を信頼しているから盟を置いて行く事が出来た。君を日本に残した意味が分かるか?」
「俺達が盟を守る為……、ですか?」
「それは確かな事だが。その為に具体的な行動を起こすとすれば、君は何をした?」