HEMLOCK‐ヘムロック‐

「妻は、きっとハメられたんだ。脅されているんじゃ……」

「その可能性も十二分にあります。今ウチの社員が橘様の家で奥様に直接、今私が説明している事と同じ話をしています」


 正也は怯えたような目で再び界を見つめた。先日笑いながら自分の白髪について苦笑した青年は、そこには居ない。



「これが今、我々が橘様に出来る最善の行為です。捜査のメスが入る前に警察に行って全てお話しするよう、奥様に御説得お願いします」

「……」


 橘 正也は完全にうなだれてしまった。






 橘 咲恵の方には透と盟が話をしていた。


「奥様、一刻も早く決意なさって下さい。ご家族の為にも」

「はい。自首、致します。ご迷、惑、おかけ、しま、うっ……うぅ~」


 咲恵の謝罪は嗚咽に飲み込まれ言い切る事は出来なかった。
透と盟はそれを複雑な想いで見ている事しか、最早できなかった。



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