HEMLOCK‐ヘムロック‐
その頃、呈朝会事務所――。
バァン!!
事務所のドアを壊す勢いで開け、1人の金髪の女刑事を先頭に複数の刑事がゾロゾロと入ってくる。
「警察だ!」
女の一声に、事務所の団員のどよめきが増した。
「サツが何の用だ?」
呈朝会会長の河端は事務所の机に座り、煙草を吸っていた。
サスペンスドラマに出て来そうなクリスタルの灰皿に煙草を押し付けながら刑事を睨む。
「警視庁、捜査一課の森永だ。ここに捜査令状がある。全員大人しくしろ」
森永と名乗った刑事はスーツの内ポケットから1枚の紙を取り出し、河端にかざした。
「一体ぇ、何の捜索だ? 外国人のオンナ刑事さんよ?」
河端のその表情は、いかにも「ウチからは何も出ないが?」という自信の色を含んでいる。
「不正薬物取引の疑いだ。これを聞いてもシラを切れるか!?」
そう言ったのはメガネをかけた若い男の刑事だった。手に持っていたマイク型のボイスレコーダーを再生する。
その内容は界が橘 正也に聞かせた物と同じ物だった。
自分達の声が流れ、若い2人の団員はえらく動揺していた。
「ここでブツが出なくても、この大石やその生徒の母親から出れば、確定だよ」
河端はポカンとした表情でそれを聞いていたが、森永刑事の言葉で我に返り、歯を食いしばった。
刑事達が各々事務所を捜索する中、女刑事は勝ち誇った笑みを浮かべ、長い金髪を肩から払った。