HEMLOCK‐ヘムロック‐
今回何故、知名度の低い黒菱興信所が芸能人から依頼を受ける事になったかというと。
実は界、盟の兄で黒菱探偵社・社長、黒菱 礼二が依頼を回してきたからなのだ。
黒菱探偵社は界達の黒菱興信所とは違い、探偵会社としては超大手で、政府の要人等も御用達である。
その為、今回の様に依頼を回してもらう事は珍しくない。
「相手は芸能人だし、アニキんトコの社員も一緒に来るらしいからな。しっかりやらねぇと」
コンコン
「黒菱探偵社の者ですー」
不意に興信所のドアをノックする音と声が聞こえた。黒菱探偵社――礼二の会社の社員であった。
「“黒菱興信所”に“黒菱探偵社”の人が来るってややこしいよな」
透は依頼人用テーブルに案内書類やら資料やらを並べながら言った。今日は彼も依頼相談の対応をするらしい。
「界、依頼人来たから、奥に行ってて」
「ほいほい」
例によって依頼人の為に界は奥の自室に行った。泉もいつも資料室で待機なので、黙って界と共に奥へのドアに向かった。