HEMLOCK‐ヘムロック‐

　黙って礼二の会社へ行った事を泉は気にしていたが、界が怒っている様子は特に無い様だ。


「泉、兄貴に何か言われたか？」

「や、別に～。世間話くらい？ てかあんま話さなかった」


　泉は明るく嘘をついた。


「そうか……。
ま、お使いご苦労だったな！ 泉隊員！！」


　そう言うと、界はいつもの調子で泉の頭をぐしゃぐしゃと撫で、髪を滅茶苦茶にした。


「ギャー！！ 止めれっ！！」


　一見全てがいつも通りだったが、泉の心の中だけは拭えない疑問と不安が散りばめられていたのを界は知らない……。


（何で透くん？ 『HEMLOCK』って何！？ 泉はみんなの為にも知らない方がいいの？
でも、気になるよ……）





　２人が帰る様子を黒菱探偵社の秘書室から、勇が静かに見ていた。