HEMLOCK‐ヘムロック‐



 界と透は鞠 あさみの行方を追っていた。
界は『Raiz』付近を、透はあさみの自宅付近を張っていた。



『自宅にはまだ帰ってないみたいだ
会員制バーの方はどうだ?』


 透のメールに界もさすがに焦りを感じ始める。


(自宅じゃないならもう可能性はこのバーしかないな)


 しかしあさみと男が出てくる様子は今のところない。


(もし入れ違いで男の家にでも行ってたら、打つ手が無ぇぞ)


 その時盟から電話が入った。


『界、今平気?』

「あぁ、」


 界は物陰に身を潜め、声を小さくした。


『「Raiz」の会員、解ったわ。鞠 あさみが会員になる前に会員になった男性はざっと1400人前後よ。
……全員が生きてるかはわからないけど』

「多すぎだろっ! 豊島さんに男の名前聞ければ一発なのに」

『さっき帰しちゃったの。せめて歳だけでも聞いとけばよかった……』


 しかし天は界に味方したのだろうか。
ちょうど『Raiz』から鞠 あさみと男――アポロンが出てきたのである。
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