HEMLOCK‐ヘムロック‐
「盟、男がアサミンと出てきた! 外国人で絞ってくれ」
そう伝えると、界は素早く電話を切り、ポケットにしまった。
あさみとアポロンは何か話していたが、界の位置では内容は聞き取れない。
とりあえずデジカメのムービーで2人の様子を目一杯のアップで収める。口の動きで会話を拾う為だ。
2人は抱き合っていたが、あさみの背中に回されたアポロンの手には何かが握られており、彼はそれをあさみのバッグに入れた。
それは――。
(くそ! やっぱりクスリだった!!)
そう、あさみはアポロンから麻薬を買っていたのである。
豊島 一哉が2人を引き裂きたい理由はこの事だったのだ。
こうなってはあさみを警察に引き渡すのが道理だが、一哉はあさみに芸能人として終わってほしくないが為に探偵に依頼したのだ。
(あんな小さなモノがヒトの人生を狂わしてる……)
突然、アポロンがあさみをきつく抱きしめた。
2人の角度が変わり、界のデジカメの画面からはあさみが完全に背を向ける形になる。
そして次の瞬間――
あさみの背中越しにアポロンは頭を起こして界の方を向いたのだ。
しかもその顔は、笑っていた。
「!!」
界は驚いて思わず画面ではなく、肉眼で2人を見た。