HEMLOCK‐ヘムロック‐
(やっぱりただ待ってられない! はやく、早くあの男から引き離さなきゃ……。アイツだけはダメだ! )
一哉は走り疲れ、息があがり、若干足も重くなっていたが、それでも例の店に小走りで向かった。
「お客様、こちらは会員制となっております。申し訳ございませんが、会員様以外は……」
店の屈強そうなドアマンが、一哉の行く手を阻む。
「頼む!! ここに鞠 あさみが来ていませんか!? 俺はマネージャーなんです!
あさみを来てるならここに連れてきてくれませんか!?」
「会員様のプライバシーには干渉出来ませんので」
「アポロンって男といるハズなんです! あの2人は!!」
一哉の半混乱した説明も虚しく、ドアマンは視線で「帰れ」と言っている。
その時、場にもう1人の男が参加してきた。
「そこのお前、アポロンと言う男を知っているのカ?」
「!? ……え、あなたは……?」
「アポロンはドコだ?」
急に介入してきた外国人の男。アポロンを知っている者の様だ。
白人男性だが、カタコトの日本語で一哉に詰め寄る。
「あ、あなたこそ、あの男と知り合いなんですか!? あの男の居場所はこっちが聞きたいですよ!!」
「コノ店にいるのカ?」
「……お客様方、申し訳ございませんが当店は会員制――」
パンッ!!!