HEMLOCK‐ヘムロック‐
「うるさい! ウルサイーッ!!
違うし! アンタに何がわかんの!? 彼は私を必要としてくれたもん!!!」
「……麻薬を売りつけるカモとしてだろ……」
「!!」
あさみは動きを止め、カバンに顔を伏せた。
くぐもった声が、界の耳に入る。
小さな嗚咽の混じる、途切れ途切れの声だった。
「それでも、全然よかった。ヤクを買えば、買わない日も、アポロンは優しかった……。話を聞いてくれた。
彼と会う為なら、麻薬でも、何でも買うよ。私」
「……薬はやってるのか?」
「ハハ、私、ヤク中に見える? ……ヤクは買い込んだケド、やってないよ」
「アポロンにやれって言われたらやったケドね」とあさみは言葉を続けた。
「私んちにいっぱいあるよ? あ、探偵サンならそんなのもうとっくに知ってたり?」
あさみの態度は段々自嘲気味になってきている。酷だと知りながらも、界は続けて尋ねた。
「いつもあのバーの店内で買ってるのか?」
「……うん。アポロンに会えるのは、あそこでだけだから。でも彼がどこに住んでるかは知らないの」
「今日は?」
「買ってない。話ししただけ」