ミモザの朽ち木
ある日、滅茶苦茶に壊れたコーヒーメーカーを見て、これはどうしたのかと流利子が俺に尋ねた。
俺が叩き壊したものだったが、適当に誤魔化した。
ある日、ひかるが深刻な顔をして俺に言った。
「パパ、顔つきが変だよ。病気じゃない?」
「……大丈夫だ、すぐによくなる」
俺は力なくそう答えた。
――私はまだ比佐史のこと、ぜんぜん愛し足りないの。
あの時、ひかるを身ごもった流利子は俺にそう言った。
十三年という歳月をかけて、流利子は俺を愛し尽くしたということなのか。
そして今は、そのあり余る情愛をほかの男に注いでいるということなのか。
流利子、どうしてお前は、生き返ったりなんかしたんだ?
寝室に飾られた記憶にない写真――ミモザの木の下に並ぶ三人の顔を眺めながら、俺は流利子を殺す決心をした。
俺が叩き壊したものだったが、適当に誤魔化した。
ある日、ひかるが深刻な顔をして俺に言った。
「パパ、顔つきが変だよ。病気じゃない?」
「……大丈夫だ、すぐによくなる」
俺は力なくそう答えた。
――私はまだ比佐史のこと、ぜんぜん愛し足りないの。
あの時、ひかるを身ごもった流利子は俺にそう言った。
十三年という歳月をかけて、流利子は俺を愛し尽くしたということなのか。
そして今は、そのあり余る情愛をほかの男に注いでいるということなのか。
流利子、どうしてお前は、生き返ったりなんかしたんだ?
寝室に飾られた記憶にない写真――ミモザの木の下に並ぶ三人の顔を眺めながら、俺は流利子を殺す決心をした。