ミモザの朽ち木
日曜日。

流利子はいつも通り、午前中のうちに家を出た。

直後に俺も家を出て、前日に予約しておいたレンタカーを取りに行き、その足で『乙ヶ部陶芸教室』に向かった。


目的の場所に到着すると、俺は陶芸教室の斜向かいにある路上パーキングに駐車して、流利子と乙ヶ部が現れるのを車の中で待った。

例によって、雑居ビルの前には乙ヶ部のロータスが止めてある。


午後一時を過ぎたころ、流利子と乙ヶ部がビルから出てきた。

二人がロータスに乗ったのを見届けて、俺はパーキングからゆっくりと車を出した。


走り出したロータスの後ろにぴたりとつける。

五分ほど走ると、二人を乗せた車はいつもと同じホテル街への路地を曲がった。

ラブホテルが立ち並ぶ陰気くさい通りを、まるで品定めでもするかのように徐行している。


やがてロータスは悪趣味な外観をしたホテルの駐車場に入り、俺もそのまま後に続いた。

ロータスは入ってすぐの空きスペースに駐車しようとしている。

俺は建物の通用口に最も近い場所を選び、急いでそこに車を止めた。


後部座席に置いてあったゴルフクラブを手に取り、素早く車を降りる。


体を寄せ合い談笑しながら、流利子と乙ヶ部が通用口のほうに歩いて来る。

俺は息を殺して車体に身を隠し、すべてを終わらせるための凶器を固く握りしめて、二人が近くまで来るのを待った。
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