ミモザの朽ち木
そろそろ目覚めないと会社に遅刻するのではと、両手で頬をはたいてみる。
しかし目の前の風景は何も変わらず、愛娘と死んだはずの妻は黙々と食事を進めている。
おもむろに俺は立ち上がり、流利子のそばに寄って肩に手を置いてみた。
かすかな体温、華奢な肩甲骨、なつかしい流利子の肩。触れている、という確かな感覚。
「なによ?」
と流利子。
俺は肩に置いた手を胸まで這わせ、むんずとつかんだ。
「な、なにやってんのよ朝っぱらから……寝ぼけてるの?」
流利子は俺の手を払いのけて困惑した表情を見せた。
携帯電話のキーを早打ちする親指の動きを止め、ひかるが上目遣いに俺を見ている。
半開きの口からベーコンの切れ端が飛び出ていた。
夢じゃないのか、これは?
俺は狐につままれたような気分で朝食をたいらげ、死んだはずの妻に玄関口まで見送られて家を出た。
いつも通りに出社するも、心ここにあらずで仕事はさっぱり手につかず、何が何だかよくわからないまま昼休みを迎え、そして家に電話を入れてみる。
「はい、乃村です」
流利子の声を確認し、俺は無言で電話を切った。
どうやら本当に死んだ妻が生き返ったらしい。
しかし目の前の風景は何も変わらず、愛娘と死んだはずの妻は黙々と食事を進めている。
おもむろに俺は立ち上がり、流利子のそばに寄って肩に手を置いてみた。
かすかな体温、華奢な肩甲骨、なつかしい流利子の肩。触れている、という確かな感覚。
「なによ?」
と流利子。
俺は肩に置いた手を胸まで這わせ、むんずとつかんだ。
「な、なにやってんのよ朝っぱらから……寝ぼけてるの?」
流利子は俺の手を払いのけて困惑した表情を見せた。
携帯電話のキーを早打ちする親指の動きを止め、ひかるが上目遣いに俺を見ている。
半開きの口からベーコンの切れ端が飛び出ていた。
夢じゃないのか、これは?
俺は狐につままれたような気分で朝食をたいらげ、死んだはずの妻に玄関口まで見送られて家を出た。
いつも通りに出社するも、心ここにあらずで仕事はさっぱり手につかず、何が何だかよくわからないまま昼休みを迎え、そして家に電話を入れてみる。
「はい、乃村です」
流利子の声を確認し、俺は無言で電話を切った。
どうやら本当に死んだ妻が生き返ったらしい。