ミモザの朽ち木
その写真の中に、あたしがいた。

あたしだけじゃない、ママとパパもいる。

黄色いポンポンのような花を満開に咲かせた一本の木の下に、あたしとママとパパの三人が並んで立っている。

すみからすみまで詳しく写真を眺めてみたが、いつどこで撮ったものなのかまったく思い出せなかった。


どうして乙ヶ部が、あたしの家族の写真を持ってるんだろう?


「この写真はなんですか? どうして先生がこの……」


言うがいなや、あたしは強烈な目まいに襲われた。

視界がぐるぐると回りはじめる。

乙ヶ部の顔がゆがんで引き伸ばされ、まるでグロテスクな万華鏡でも見ているように、部屋の景色と交じりあって渦を巻いている。

意識がだんだん遠のいていく。


乙ヶ部がなにかを言ったような気がしたけれど、それを聞き取ることはできなかった。


しだいに白くかすんでいく視界が、突然スイッチを切られたみたいに真っ暗になり、なにも見えなくなる。


あたしは闇の中へと落ちていった。
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