ミモザの朽ち木
……ギィ、ギィ。


確かに音が聞こえる。

音はあたしのすぐ近くで鳴っているような気がした。


ギィ、ギィ、ギィ、ギィ。


浮遊するあたしの上下運動にあわせるように、その音は一定のリズムで鳴りつづけていた。

だけど、なんとなく悲しげな響き方をしている。


ギィ、ギィ、ギィ、ギィ。


音。熱。気配。


体全体にじわりと広がっていくこの感覚はなんだろう?

あたしはそれが知りたくてたまらない。


――光。

淡い光がうっすらと闇を覆いはじめた。


ギィ、ギィ、ギィ、ギィ。


明るい場所を求めて、あたしは闇の中を急浮上していく。


そして光の中に飛び込んで――


あたしは目を開いた。
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