ミモザの朽ち木
ギィ、ギィ、ギィ、ギィ。


あたしの上に乙ヶ部がいた。


パイプベッドのきしむ音が、乙ヶ部の動きにあわせて部屋の中に響いていた。


乙ヶ部が死人のような目であたしを見下ろしている。

なんの感情も込められていない瞳。

けれど、そこにはなんらかの意思が宿っている。

あたしはそれが恐ろしくて仕方なかった。


気がつくと、乙ヶ部の顔がパパの顔になっていた。


パパがあたしの上で、ゆっくりと規則的にうごめいている。


ひかる――。ひかる――。


あのころと同じように、パパがおぞましい声であたしの名前を呼んでいる。


この時になって、あたしはようやく悟った。

あたしは一生、パパから逃れられない。


ギィ、ギィ、ギィ、ギィ。


悲しげに鳴りつづけるその音が、あたしを再び闇の底へと突き落とす。


燃えてしまえばいい、そう思った。


この世のなにもかも、燃えてなくなればいいのに。









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