ミモザの朽ち木
誰かが彼に言った。


自分がこの世に存在している理由を見出せ、と。


彼には全く理解できなかった。

ただ滅んでいくだけの存在が、それ以上の理由を求めて何の意味があるのだろう?

ありもしないものを捏ね上げ表面を取り繕ったところで、それはただの自己欺瞞ではないのか。

無理に理屈をつける必要性など全くない。

あまりにも滑稽で愚かしい。

人々はなぜ、詭弁を道理として容認し、矛盾に満ちた世界を作り上げ、自らを正当化するために虚像を追い求めるのか。


彼は不思議で仕方なかった。
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