それでも、私は 。
『引っ越してきたの?』
「はい、そうですけど…」
『ここ、マンションとマンションの間かなり近いよなあ。』
「はあ、まあ。」
『何才??』
「20才です」
『あ、じゃあ、俺より一個下か!』
すると、にこっと爽やかな笑顔を見せた。
その爽やかな笑顔をみて、やっぱり昨日の人と同一人物だな、なんて思った。
『俺、迦南。松原迦南。』
「あ、詩織です。椎葉詩織。」
「詩織ちゃんか。よろしく!」
迦南さんは、ベランダからそっと手を伸ばす。
私もゆっくり手を伸ばす。
ベランダ越しで握手が出来てしまうほど、
マンション同士かなり近いな、なんて改めて思った。
握手をした瞬間。
彼は綺麗な白い歯を見せながら、何の屈託もないようなその笑顔を私にみせた。