ホットミルク

練習

それから数日後。



あたしたちは本格的に『夕鶴』に向けて取り組み始めた。



台本も何回も繰り返し読み込み、主役になりきるためにかなり頑張って練習していた。




「おじいさん、おばあさん………う~ん、違うかな。ここはもっとこう…。」



結構練習したから、だんだんセリフも覚えてきた。



感情を上手く伝えるために、微妙な声の感じを出すために必死で考えていると、松山君が声をかけてきた。



「頑張ってるな。」



「あ、松山君。でも結構難しいよ。感情込めるのって大変なんだなって改めて感じる。」



「確かにね。でもおもしろいだろ?演じるのって。」

「うん。どんな役でも、それはいつも思う。演じることで、いろんなこと学べるしね。……なんて、偉そうだけど。」



「いや、俺もそれ分かるよ。まだそんなに役こなしたことないけど、演じることで自分の生き方も見直せるしね。」



松山君も、ほんとに演じることが好きなんだなぁ。



あたしもせっかく主役もらったんだから、頑張らないと。



「そういえば、松山君は何の担当になったの?」



「俺は大道具だよ。まだ入ったばっかりだしな。今もでっかい木とか作ってる。」



「そうなんだ~。さすがに木の役者はいないよね。」



「ははっ、さすがにな。」


なんか松山君って意外に話しやすいな~。




最初会ったときはもっと怖い人だと思ってたけど。



これから仲良くなれそう。
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