ホットミルク
見ると、一人の女の子が友達に囲まれて泣いているのが見えた。



どうしたんだろうと思って近づくと、どうやら泣いているのは2年生の先輩のようだった。



「あの…どうしたんですか?」



「美香ちゃん……。」



一人の先輩が少し気まずそうに振り返った。



「実は、今日この子かなり厳しく叱られて、ある人に演技に向いてないとまで言われちゃったみたいなの。」


「え…誰がそんなこと…。」



「ぐすっ…美香ちゃんはいいよね、1年生なのに主役に選ばれちゃって。あたしなんて、こんな脇役なのにそれさえもまともにできない…。ちょっと可愛いからって、みんな美香ちゃんに甘すぎなんじゃない?」



「ちょっとあんた、それ言い過ぎ……。」


「なによ、実際それほど実力もないくせに…。本当は2年のうちらが主役やるべきなんじゃないの?会長も実は美香ちゃんに下心あったから選んだだけだったりして…。」



「いい加減にしてください。」



声のした方を見ると、松山君だった。



「さっきからなんなんですか、俺にはただのひがみにしか聞こえないんですけど。土屋さんは、ちゃんと実力があって主役に選ばれたって、さっき会長も言ってたんですよ。先輩も、悔しかったらそんな風にくだらないこと言ってないで、演技もっとしっかりやって見返そうとか思わないんですか?」



松山君………。




「………。ごめん、美香ちゃん、言い過ぎた。あたしどうかしてたよね、ほんとにごめん…。」



「いえ…あたしもまだまだですし、これからもっと学ばなければならないことはたくさんあります。叱られたときは辛いですけど、それを素直に受け止めて一緒に頑張っていきましょう?」


「うん、美香ちゃん…ありがとう…。」



先輩、ものすごく辛かったと思う。


でもさっき言われた先輩の言葉も、きっと心のどこかにはあるんだ。

こういうみんなの思いも抱えて、主役はやらないといけない。



頑張るよ、あたし。
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