ホットミルク
お互い着替え終って更衣室から出てくると、松山君がコートを着ながら言った。


「もう夜遅いし、送ってくよ。土屋さんの家結構近いし。」



「ありがと。わざわざごめんね。」



「いいよ。こんな時間に一人は危ないから。」



二人で外に出ると、冷たい空気が体を撫でた。



もう11月だもんね。



昼間暖かくて油断してても、夜は結構寒いなぁ。



「結構寒いね。」



「うん。」



遠くで学祭の準備を終えた人たちが笑いながら話しているのが聞こえる。



しばらくお互いに口を開かなかった。



だからと言って別に気まずさを感じることもなかった。



あたしたちは無言で、冷たい夜の中を歩いていた。



「ねぇ、松山君は玲子ちゃんのどんなとこが好きなの?」


あたしは唐突に聞いた。


「え?なんで?」


「なんでも。」



松山君が少し考え込んでから言った。



「…高校のときさ、俺の両親離婚したんだ。最初は結構仲良かったのに、中学あたりからだんだん喧嘩が多くなってきて…。俺は親父に引き取られたんだけど、親父結構荒れちゃっててさ。毎晩のように違う女が家に来てた。その度に、俺は外に追い出されて。
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