この世界で二度きみを殺す
『…わかんない』



草むらの中に、葉っぱだらけの背中が見える。


その、丸まっていじけたような姿を見ていると、

ある衝動に駆られ、手や腕が疼いてくる。



『…じゃあ、葉っぱだらけの誰かさんが可愛く見えて、抱きしめたいって思うのは?』



小さくなってたその姿は、こちらに背を向けたまま、ゆったりと立ち上がった。



『それ、ほんとう?』



僕は頷き、細い腕をこちらに引っぱり、抱き寄せる。



その瞬間、ざあっと音を立てて雨が降り出した。
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