この世界で二度きみを殺す
『ほんとう?ほんとう?ほんとう?
ちさと、すっごい嫌なやつだよ?
そーちゃんには、ちさとだけいればいいんだって、思っちゃうやつだよ?』


『うん、知ってる』


『ちさとと一緒にいても、そーちゃん、幸せになれないかもよ?』


『そういう難しい事は、あんまわかんないから大丈夫』



雨粒が体に叩きつけるけれど、

痛さより、腕の中に納まるちさとの温もりの方が大きい。



それにしても、ここまで来るのに、大分めちゃくちゃな道を歩んできた。


それを思うと何だかおかしくて、吹き出してしまう。


そして僕が初めて見せた心の底からこぼれた笑みを見てか、

ちさとは口を噛み締め瞳には涙を溜める。



『ごめんね、ごめんね。
そんな風に言われたら、そーちゃんの事、ずっと離せなくなっちゃう』



けれど本当は、僕がそう言うのを、心のどこかで夢見ていたのだと。


だからごめんね、ずるくてごめんねと、ちさとは言う。



僕は言葉の代わりに、ちさとを更に強く抱きしめた。
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