この世界で二度きみを殺す
『―――ごめんね、ごめんね、ごめんね…』
ちさとが相変わらず、ごめんねばかりを言い続ける。
ここは白い小さな部屋の中。
芯まで冷えた体を暖めようと訪れた、恋人たちのための部屋の中。
僕らの吐息に混じり、呪文のようなその言葉が、部屋に響き続ける。
服越しには細すぎると思っていたちさとの体は、思いのほか滑らかな曲線で描かれていて、
首から肩、そして腕にかけての線が一際綺麗で。
僕の目線に気づいたちさとは、薄いタオルケットに包まれてしまったけど、
そこから垣間見える真っ赤な額や耳、
それを含めて、全て、見守っていたいと思ったんだ。
ぜんぶ、ぜんぶ。
ずっと、ずっと。
だから、全てが終えた後の安らかなひと時に。
僕に腕枕をされながら、痛みのあまりに背を向けているその姿に。
そっと、呟くように言った。
『卒業したら、二人で暮らそっか』
ちさとの耳が、背中が、再び赤く染まっていった。
そうして声にはださなかったけど。
こくん、
と、小さく確かに頷いた。