この世界で二度きみを殺す
髪を上げているせいで、惜しげもなく晒される、白い首筋。


制服のワイシャツが少し着崩れていて、

首から肩の、あの滑らかなラインが垣間見える。


そして、甘みと酸味が交じり合った、さっぱりとしたシャンプーの香り。


なだめるように背中をさすっていると、

服越しではない、その下の素肌を撫でたいという欲求に駆られる。


スタッフの慌しさが、向こうの方へと移動してゆく。


ちさとは僕の腕の中ですっかり縮こまっている。



…どうすれば、その不安を取り除けるだろうか。



背中を触れるか触れないかくらいの力でさすっていた手に、

別の意図を混じりこませ、蠢かせるようにする。



何でもいいから、とにかくちさとを泣き止ませたくて。


布の下にあるものを、少しでも感じ取りたくて。


僕の意図に勘付き、ちさとが顔を上げる瞬間、その肩に顔を埋めた。



けど次の瞬間、ちさとは両手で僕の胸を押しやった。
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