この世界で二度きみを殺す
明白な、拒絶反応。



ちさとは涙を溜めたまま、目を大きく見開いている。


驚きの感情に混じっているのは、僕を苛むような色。


しかし、それは涙とともに拭われ、いつもの笑顔とそっくりな仮面の下に隠された。



「とにかく、そーちゃんが無事でよかった。
ちさと、スタッフの人たちにお礼言ってくるから、そーちゃんはここで待ってて」



逃げるように駆け出し、大きな音を立てて扉が開閉される。


ぱたぱたという足音は、次第に小さくなってゆく。


それを耳にしながら、僕はちさとが出て行った扉を傍観するように眺めていた。
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