この世界で二度きみを殺す
「ねぇ、そぉちゃん…?」



嵐が去った後の静けさのような声。


けど、それは声量の問題で、

血が感じられない程度だった冷たさは、ドライアイスと同じくらいにまでなっていた。



「あの女に触れられたとこ、失くせば綺麗になるのかなぁ…?」




背筋を冷たいものが這う。


そして次の瞬間、バットが容赦なく振り下ろされた。



しかし身をよじって辛うじて避けたので、

それは僕の頭ではなく、後ろの棚にめり込んでいる。


ぱりぱりと、木の折れる音がする。


木屑が煙のように、バットの下から舞い上がっている。



「ち、違うんだちさと…。聞いてくれ!」



まるで浮気男の決まり文句だ。



けど、今のちさとにとっての僕は、それと同じ、

――いや、それ以上の悪者なのだろう。


存在自体が地球上の全女性陣に有害だとか、そのぐらいのレベルの。
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