この世界で二度きみを殺す
濡らし作業を終えると、適当な量のシャンプーを手の平に乗せる。



ぬるま湯を扱っていたので、ひんやりとしていて余計冷たい。



その間、ホースはちさとが両手で大事そうに持っていて、

既に限界値だったプールのお湯は、再び溢れ出している。




そして、流れる水を堪能した後は、シャンプーの泡を立てる音。



引っ掛かりのない音の後に来るそれは、完成間際の料理に、酸味を加える行為のようだ。



素っ気ない庭に柑橘系の香りが広がり、嗅覚を甘く刺激する。


そして僕の手で、ちさとの髪を、庭を優しく包むものと同じ色に染め上げてゆく。



これは、僕もいつからか使っているシャンプーで、香りが直感的に気に入ったものだった。
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