この世界で二度きみを殺す
―――ゴトン。



「………ちさと?」



その時、鈍い音が部屋に響いた。


足元にはカップが転がり、フローリングの上で中身が広がっていく。




「…………。

……ぇ……、



…うぇ…えっ…っ!」


「―――ちさと!?」



次の瞬間、ちさとは両手を口に当て、胃の中の物を吐き出した。


何度も何度も床に向け、全て出し切ると、今度は胃液を吐き出す。



慌てて我に返った僕は、ちさとをトイレに誘導し、背中をさすった。



「…ぇ…、
うぇ……、そ、ちゃ…、ぇぇえ…」



「ちさと、ちさと、大丈夫だよ、僕がいるから。
僕がついてるから、大丈夫だよ」



そう言って、落ち着かせようとする事しかできない。


あまりにも突然の事で、どう対処すべきかわからない。



「またやっちゃ…、ぅぇ、
そ、ちゃ、くるしいよぉ…」


「ちさと、喋らないで呼吸整えて、」



背中をさすりながら、ちさとの呼吸を誘導するように、自分の呼吸を大袈裟にして見せた。
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