この世界で二度きみを殺す
その後、ブラウン管を流れる天気予報や、

あくびの出る旅行番組をゆったりと眺めてから、僕らは家を出ることにした。



時間帯は、昼前の前といった所か。


若干早いけど問題はない。


それより朝早く起きた分、午前中が長く感じて退屈で仕方なかった。



持ち物は、財布と携帯と、大き目の傘一本。



忘れ物が無いかポケットをまさぐっていると、

廊下の突き当たりにある台所から、母親が顔を出した。



「二人とも、どこか行くの?」



ジーパンに黒のジャケットを羽織った僕に、

制服のワイシャツに、綺麗めの紺のスカートを合わせるちさと。



フォーマルな香りが仄かに漂う僕らの格好を見て、母親は目を丸くしながら尋ねてきた。



「うん、えーと、まぁ…。
駅東のデパートとか、その辺で買い物」


「あぁ、」



駅東周辺は、物価も客の平均年齢も高めだ。



つまる所"良い感じ"の店が建ち並ぶわけで、

Tシャツやパーカーはもちろん、制服でだって歩けない。




母親もそこの雰囲気だけは何となくわかっているらしく、

顔を何回か縦に振って納得した。



「念のため、鍵も持ってってね」


「わかった」



胸の高さくらいの靴箱の上から、無造作に置かれた家の鍵を取る。



そうして僕らは、玄関から雨の中へと歩みを進めた。

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