この世界で二度きみを殺す
まさか見学に予約が必要だとは思わなかった。



今、僕らは式場へ繋がるコンクリートの長い階段の下で佇んでいる。


どちらかと言えば駐車場に近く、式場の厳かな雰囲気は薄く、緊張も少しは緩む場所だ。



階段の先を見上げると、そこにはレンガ造りの、洋風な気高き建築物。



空に向かって高くそびえ
塔をはべらすその様子は、もはや芸術品と言っていいくらいで、

レンガやガラス窓、その他の装飾品が織り成す外観は、

どのような数値に基づき配置されているのだろうと、感嘆の情に浸らざるをえない。



例えそれがどんなに統一感のない数字の羅列でも、

意味深で、美すら漂うものに見えるんだろう。




――と、少なすぎる語彙で、この凄すぎる建物がどれくらい凄いのかを、

かなりの背伸びで表現してみた。



しかし頭を過ぎるのは、僕らが建物の中に足を踏み入れた、あの瞬間の事。



スタッフの、若すぎる二人を見つけた時と、

予約を入れていない二人の若すぎる行動を知った瞬間の、あの目。



僕は当分、忘れ(られ)ない。
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