この世界で二度きみを殺す
「さっきのお庭行こうよ!!」


「に…、庭??」


「うん!
建物入る前に噴水とかあったでしょ?あそこ!!」



そう言って、階段の上を指差す。



ここからは見えないが、コの字型の建物に囲まれるようにして、その庭はある。


そして建物のあらゆる場所から、眺望できる形になっている。



「いや、でも予約必要って言われたし…」


「中の話でしょ?
お庭は外だもん!」


「いや、でもさ、」



濡れるのもお構いなしに、ちさとは傘から離れ、階段を駆け上がる。


聞く耳を持たないというよりは、聞こえる耳を持たない感じだ。


これから頂戴するであろう三度目の冷ややかな視線を想像しつつ、重い足で僕もその後につく。



そして遥か上を行くちさとに目をやると、

小気味良く階段を踏みしめていたその足が、だんだんリズムを怪しくするのが見えた。



「ちさと!
急ぐと危ないよ!」



雨に声をかき消されまいと、上に向かって叫んだ、

その時だった。




階段を踏み外したちさとが、こちらに向かって降ってきた。
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