この世界で二度きみを殺す
「―――そーちゃん!!」



ちさとの声が聞こえる。



ちさとの心配そうな表情も見える。



なのに、それに応えることができない。



全身が石のように硬い。



「そーちゃんそーちゃんそーちゃんそーちゃん!!」



―――聞こえてるよ。

大丈夫だよ。



それを少しでも伝えたくて、ちさとの頬に手を伸ばそうと、体に少し力を入れる。



けれどそれはぴくりとも動いてくれなくて、

くすぐったい、麻痺の感触が、体中を支配するだけ。



視界に、ちさととは違う人がたくさん入ってくる。



みんな、こっちを見てる。



みんな、何かを言ってるようだけど、

はっきり声が聞こえるのも、はっきり顔が見えるのも、ちさとのだけだった。



けれどそれもぼんやりしてきて、

向こうの世界は大変そうだなぁ、

なんて思えてくる。



僕はこれで死ぬのだろうか。



「ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね!死なないで…!」



ちさとの震えた声が聞こえる。


顔を叩いていた雨粒が、それに合わせて強くなる。




こんな光景、前にも見たことが、



ある、


気がする。



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