僕らのままで
もどかしい──Side 美亜
*side美亜*


「おーい、美亜」
 哲が、いきなりあたしの名前を呼んだ。

「なにー?」
 ちょっとイライラしながら返事する。うちわを動かす手は止めない。
「あたし、忙しいんだけど」

 隆志が水をかけたせいで、消えかけてしまった焚き火。それにもう一度勢いを蘇らせるのは、至難の業。

 本当は、男の子がやるべき仕事だと思う。だけど、ここにいる男共ときたら、食べることにしか目が無い。哲なんて、自分の焼おにぎりが水浸しになったからって騒ぎまくって、なにもしてない。

 結局、火を起こすのはあたしの役目になってしまった。

 さっきからずっとしゃがみこんでいるせいか、腰が痛い。

「美亜ー。なんか怒ってる?」
 わざと甘えた声で聞いてくる哲。

 ええ、そうですよ。
 怒ってますよっ!!

 自分は食べてばっかりで、いいご身分よねっ。
あたしなんか、まだお肉食べてないっていうのに。

 普通、こういうアウトドアって、男の子がリードするものなんじゃないの!?

 あたしだって…あたしだって、食べたいわよおっ。

 思わず、うちわをぶん投げてやりたくなる。

「美亜ってばー」

 また哲だ。

「みーあーちゃんっ♪」

「何ようるさい!!用があるならハッキリ言いなさいよっ」
 あたしは焚き火から顔を上げて、じゃがバタに舌鼓を打っている哲を睨み付けた。

 つ、と汗が頬を伝う。あんまり長い間、火の側にいたから。きっともう、メイクはぐちゃぐちゃだ。
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