僕らのままで
あたしの剣幕に驚いたのか、哲は刈り込んだ坊主頭を撫でながら、パチパチと瞬きをした。
「焼きりんご…食わねぇかな、と思ったんだけど…」
そう言って、紙皿を差し出してくる。そこには、いかにも甘そうな蜜をたたえた焼きりんごが一つ、アルミホイルに包まれていた。
「お前、さっきから何も食ってないだろ」
うそ…──。
──気付いてたんだ…。
一瞬だけ、うれしくなった。
だけど、ほんの一瞬だけ。
「気付いてんなら、仕事代わってよ!!あんたは食べてばっかりじゃないっ」
気が付くと、自分の口からはそんな言葉が飛び出していた。
言ってしまってから、プチ・後悔。
──『ありがとう』って、言えたらよ買ったのに。
残念ながら、あたしはそんな可愛らしい性格じゃない。
だから、いつも波流と比較される。
女の子らしくて、可愛いくて清楚な波流は、気遣いもいい。男の子にとっては、理想のタイプ。
『守ってあげたくなる』ような…。
それにひきかえ、あたしは。
ちっとも女の子らしくなくて、言葉遣いは荒っぽくて。すぐ怒るし…。
『守ってあげたい』どころじゃない。むしろ、恐れられているような気がする──。