僕らのままで

 俺と美亜は、幼なじみ。
 ずっと、一緒に育ってきた。

 だからと言っちゃなんだが、ケンカは日常茶飯事で、時には俺が泣かされたこともある。

 だけど、美亜が泣いたのを見たことは、一度しかなかった。

 忘れもしない、中学校の卒業式。

 みんなバラバラの高校に行くことになって、それぞれが別れを惜しんでいたときに、美亜だけは一人、どこかへと姿を消した。


 俺は気になって、こっそり跡をつけた。


 これは、今でも後悔している。なぜって、辿り着いた教室で、一人で嗚咽を洩らしている美亜を見たから。

 見てはいけないものを、見てしまった。

 美亜は、泣くところを、人に見られたくは無かったんだ。

 でも、俺は見てしまった…───。


 なあ、美亜。

 お前、色々自分の中に溜め込んぢまうんだろ?


 強がるなよ。


 もっと、俺を頼れよ。


 誰よりも美亜のことを知ってるのは、俺なんだからさ…──。


「…哲」

 ふいに、美亜が言った。

 りんごを食べ終えて、アルミホイルをきれいに畳んでいる。

「どうしたら…優しくなれるのかなあ?」
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