僕らのままで
「は?」
 思わず、聞き返してしまった。
「優しく?」

 うん、と美亜は頷いた。
「波流みたいに、優しくなりたいのに。どうしても、なれない」


 …美亜。


 お前、そんなこと考えてたのかよ。

「バーカ」
 俺は、わざと茶化して言った。
「優しい美亜なんて、気味悪いって」

 これが、大失敗だった。

 美亜はグッと目を見開いて、俺を睨み付けた。
「ほらねっ!!やっぱり、哲もあたしのこと優しくないって言ってるんだ!!」

「ちっ、ちげーよ。俺が言いたかったのは…」

「哲のバカ!!」

 美亜は叫ぶと、うちわを俺の腕に押しつけた。

「哲は、あたしのこと──何も判ってないっ!!」

 あんまり大声で怒鳴るから、隆志たちがワラワラと集まってきた。

「どうした?」
「またケンカかー?」


「ああ、いつものだよ。気にすんな」
 俺は、ニッコリを装って、隆志たちに答えた。
「すぐ終わるから」

「…そうか?」
 隆志は、トング片手に、汗で額に貼りついた前髪を掻き上げた。
「それなら良いけどよ。哲、お前もう少し美亜に優しくしてやれよ?」

「あ…あぁ…」

 俺は、生返事をした。

 隆志達は、早速バーベキューへと戻っていく。
 一方の美亜は、俯いたまま、小さく震えていた。
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