僕らのままで
どきどきする──Side 波流
*5 side波流*


 バンガローの中は、煙の匂いもしなくて、涼しかった。

 くすんだ色のフローリングに、窓から舞い込んだ紅葉が散らばっている。

 真っ赤な葉。
 黄色い葉。
 サッと手で集めて、テーブルに乗せてみると、葉っぱのグラデーションができた。

「ね、涼クン。見て…」

 綺麗でしょ、と言おうとしたけど、私は口をつぐんだ。


 涼クンは、タオルで濡れてしまった身体を拭いている真っ最中。

 オレンジのTシャツを脱いで、上半身が顕になっていた。


 細身の涼クン。

 だけど、意外にもその身体は筋肉質で───。


 そのギャップに、私はちょっぴりドキッとした。


 さっきから、私は変だ。

 まだ何となく顔が熱いし、ちょっとした会話でも、大きく反応してしまう。


 こんなことは、初めてだ。

 涼クンが、あたしを火から庇ってくれてから───彼を、今までとおなじように見ることが出来ない。


 目を、合わせられない。


 気恥ずかしくて。


「波流…?」

 私が彼の背中を見つめていると、視線を感じたのか、涼クンは振り返った。


 やだっ。
 恥ずかしい…。


 サッ、と目を紅葉に戻す。

 もうっ。
 早くTシャツ着てよ…


 ドキドキが、治まらないから───。
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