僕らのままで


「美亜を…守りたいって、思った」


 哲が続けている。


「一緒にいて、楽しいひとだから。一緒にいて、安らげるひとだから」


「哲…」


「ケンカもする。お互いぶっきらぼう。だけど…俺は、美亜が好きなんだ…」


 繰り返される言葉。


 『好き』


 こんなにも温かい響きだとは、知らなかった。


 まさか哲から言われるとは思ってなかった。


でも────


 あたしは、それを嬉しく思っている自分に気付いた。

 ウソみたいだ。

 あたしが、哲に心を許してるなんて…。

 でも、ウソじゃない。

 ホントに、ホントに、胸があったかくなって。


 泣きたくなるくらい、感激している自分がいる。


「嬉しい…」


 あたしは、小さく呟いた。

 素直に言うのは、気恥ずかしいけれど。



「嬉しいよ…───ありがと、哲」



 ようやく、その言葉ばあたしの唇から放たれた。


「美亜は?」

 不安げに、哲が聞いた。
「美亜は、俺のこと───どう思ってんの…?」


 あたしは、クスッと笑った。
 心配そうな哲の顔が、すごく可愛らしかったから。

 でも、ここはからかったりするシチュエーションじゃないよね。


 『伝える』場なんだよね。

 あたしの、

 素直なキモチを。




「あたしも。好きだよ。
哲…────」



「美亜…」



 あたし達は、見つめあった。

 哲の瞳の中に、あたしが映ってる。

 きっと、あたしの瞳の中にも、哲が住んでる。



 きっと、これからもずっと───。


 ふいに、哲の顔が近づいてきた。


 あたしは、微笑んで、目を閉じた。



 ねえ、哲。


 あたしたち、これからも沢山ケンカするんだろうね。


 だけど、ね。



 いつまでも、忘れないよ。


 あんたが、こんなあたしを、丸ごと好きだって言ってくれたこと。



 そんなことを考えてる間に、

 
 優しいキスが、
 
 

 あたしを包み込んだ────。
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