僕らのままで
伝えたい──Side 涼
*side涼*

 その言葉を吐き出した途端、波流がビクンと震えた。


 あぁ、

 もう後戻りは出来ない。

 時間は巻き戻せない。


 僕は、何も言えないまま、波流を抱きしめる腕にギュッと力を込めた。

 折れてしまいそうな波流の背中は、とても熱い。


 声をかけることも出来ないまま、僕は波流を抱きしめ続けた。



 波流は、何も言わない。

 けれど、僕の腕から逃げていくこともしない。


 二人の間にあるのは、沈黙と温もりだけだった。



 レモングラスの香りが、僕を優しく包み込んでいた───。


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