僕らのままで
鳶が鳴いた。
チャプ…チャプ…
湖が、そっと波を岸に寄せる。
僕は、何気なく汚いスニーカーを脱いで、岸に腰をおろした。
白く小さな石がゴロゴロしている地面。手をつくと少し痛かったけれど、すぐに慣れた。
そのまま、両の爪先を水に入れてみる。
チャプン…
すでに冷たくなった山の水が、ゼリーのように僕の足を包み込んだ。
「冷てー…」
思わず、小さく呟いた。
すると、波流が近寄ってきた。まだ頬は薄桃色をしている。
「つめたい?」
彼女が、小声で問い掛けてきた。
「うん。でも、気持ちいいよ」
僕は、必死に何でもない顔を装った。本当は、波流が近くにいてくれることが、嬉しくて嬉しくて堪らなかったのだけれど…。
「あたしも…やってみようかな」
波流が、呟いた。
おもむろにムートンのブーツを脱ぎ始める。
思わず──僕は、その一連の動作に見入った。
毛糸の暖かそうなソックスを脱ぐと、彼女の真っ白で細い足が現れた。足首には、金の華奢なアクセサリーが纏いついている。足に比べて、大きめのサイズのようだ。
「あっ、ダメだ───」
僕は声を上げた。
けれど、遅かった。
彼女が足を湖に入れた瞬間、金のアクセサリーはふわっと浮き上がった。そのまま波に乗り、彼女の足首から逃げていく。
「あっ、あぁ───あ」
波流の悲鳴も虚しく、アクセサリーは波に弄ばれながら運ばれていった。
沖へ、沖へと…。
「──残念…お気に入りだったんだけどな」
ため息と共に、波流がしんみりと言った。
その横顔は、見ているだけで僕を淋しくさせて。
なぜか、僕を突き動かした。
僕は、立ち上がった。
恐らく、撥ねる油から波流を守ろうとしたときと同じ、無意識の内に────。
チャプ…チャプ…
湖が、そっと波を岸に寄せる。
僕は、何気なく汚いスニーカーを脱いで、岸に腰をおろした。
白く小さな石がゴロゴロしている地面。手をつくと少し痛かったけれど、すぐに慣れた。
そのまま、両の爪先を水に入れてみる。
チャプン…
すでに冷たくなった山の水が、ゼリーのように僕の足を包み込んだ。
「冷てー…」
思わず、小さく呟いた。
すると、波流が近寄ってきた。まだ頬は薄桃色をしている。
「つめたい?」
彼女が、小声で問い掛けてきた。
「うん。でも、気持ちいいよ」
僕は、必死に何でもない顔を装った。本当は、波流が近くにいてくれることが、嬉しくて嬉しくて堪らなかったのだけれど…。
「あたしも…やってみようかな」
波流が、呟いた。
おもむろにムートンのブーツを脱ぎ始める。
思わず──僕は、その一連の動作に見入った。
毛糸の暖かそうなソックスを脱ぐと、彼女の真っ白で細い足が現れた。足首には、金の華奢なアクセサリーが纏いついている。足に比べて、大きめのサイズのようだ。
「あっ、ダメだ───」
僕は声を上げた。
けれど、遅かった。
彼女が足を湖に入れた瞬間、金のアクセサリーはふわっと浮き上がった。そのまま波に乗り、彼女の足首から逃げていく。
「あっ、あぁ───あ」
波流の悲鳴も虚しく、アクセサリーは波に弄ばれながら運ばれていった。
沖へ、沖へと…。
「──残念…お気に入りだったんだけどな」
ため息と共に、波流がしんみりと言った。
その横顔は、見ているだけで僕を淋しくさせて。
なぜか、僕を突き動かした。
僕は、立ち上がった。
恐らく、撥ねる油から波流を守ろうとしたときと同じ、無意識の内に────。