Alice Doll
『アレス手作りのクッキー美味しいのに…』
残念そうな顔をする若い男は、クッキーを一口、口に含むとすぐに我に帰った。
『あっ、いえ……またもや、失礼な発言をお許し下さい。その話は、また後でゆっくりと。ワタクシ、“ALICE DOLL”に属する人形師、レイチェルと申します』
「……アリス…ドール?」
レイチェルと名乗る若い男は首を縦に振り、話を続けた。
『はい、ALICE DOLLです。人形師たちが集う業者、とでもいいましょうか』
曖昧な言葉とは裏腹に、レイチェルは男から視線をはずさなかった。
何か自信に溢れているような、そんな感じだ。
しかし、そんなことよりも――…
「――それよりもお前だッ!!何故、赤の他人であるお前のような奴が此処にいるのだ!?」
すると、レイチェルは嘲笑うかのようにクスリと笑った。
『赤の他人…ですか?』
不気味な空気に男は耐えることが出来ず、百合亜が眠るベッドの上に手から崩れ落ちた。
その瞬間、手に持っていた人形は床へと転げ落ちる。