私に恋を教えてくれてありがとう【上】
一応テーブルの上にメモを置いた。
もし二人とも家の鍵を持っていなかったら、と懸念し、ポストに鍵を入れておいた。
急がないと・・・・・・と
免許を持っていないそらは愛用のTハンドルの自転車にまたがった。
「そら!」
父の声だ。
横に母がいた。
目が合わないうちに私は母から視線を外した。
「私病院から呼び出されたから、
これから夜勤してくる
鍵はポストに入ってるからよろしく」
黒いカシミヤのマフラーを後ろで縛り
口元を少し隠しながら言った。
母の姿を見ると顔が引きつってしまう。
昨日のあの罵声、そして疑惑で
そらの中の憎悪が一気に噴き上げ、あの生き物が
暴れ狂った。
そして自転車をひと漕ぎした。
「そらちゃん!!」
「昨日ごめん!!!!」