私に恋を教えてくれてありがとう【上】
私と夫人は目が合ってしまった。
なんてことだ。
仕事帰りの時と同じく、この病室は電気スタンドしかついていない。
夫人の歪んだ顔を更に恐ろしくみせたのだ。
「あなたがそうしないと意味ないのよ
他の人だと、噛みつくのよ」
皮肉たっぷりにそらにばしっと叩きつけた。
そして、貧乏ゆすりをはじめ、続けた。
「この人ね、私と一緒にいてもずっと
首を振るの。
どんなに愛情深く接したってだめよ。
あなたの姿を見なくなってから、
発作を起こしたみたいに唸ってみたり
ベットから降りようとしたり・・・」
彼女は
唇に人差し指と中指を当て息をふっと吐き
たばこを吸いたそうな様子を見せた。
そらは何も言えずに黙りこくっていた。
牧田はまた唸り始めた。