私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「・・・は、なこ


 はなこ・・・はなこ・・・・・


 はなこ

 ありがとう、ありがとう」


この繰り返しだ。




歳でしゃがれた声の『ありがとう』中に、



“愛してます”


と、気持ちが込められていた。



・・・・せめて夫人の前では呼ばないで欲しい。


それに、その名前を聞くとあの生き物がこの患者を

食いちぎってしまえと命令するようだった。



「いいえ、

 しらいしですよ?」


そらは優しく言い返した。



「・・・・・・・・

  いいじゃない。

  “はなこ”でいてあげてくださいよ」

鼻で笑いながら言われた。



「あの・・・・・・」



「なんです?」



夫人は面倒臭そうなに返事をした。


「失礼だとは思いますが、

 “はなこ”さんとは

 どんな方なのでしょうか」







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