私に恋を教えてくれてありがとう【上】
「そうは問屋が卸さない。
私もあなたに聞きたいことがあるわ。」
枯れた声で夫人が切り返してきた。
ギクリともしたが、聞かれることはおおよそ見当がついていた。
「私の勘違いでなければ
その質問の答えは“はい”になると思います」
そらは今までの態度とは違い、冷静沈着に牧田を見ながら言った。
牧田は嬉しそうに ありがとうとにっこりした。
それを白い目で見ながら夫人が話始めた。
「じゃぁ、
やっぱりあなたは
“佐藤 華子”の娘というわけね」
母の旧姓だ。
そらは頷いた。
身体が重くなったように感じた。
そして、また“得体のしれない憎悪”がのしかかってきたのだ。