私に恋を教えてくれてありがとう【上】
ふと牧田を見ると、
彼はやっと眠りについたようだった。
もう手の力は抜けていて、
そらは自分の手を解放してもらい、
きちんと呼吸をしているか、点滴が落ちているかを確認した。
牧田夫人は、そらが手を放したら、
また牧田が起きるのではと彼の様子を少しうかがった。
・・・・心配いらないようだ。静かに寝息をたてたままだ。
「このままここで話しましょう。
私たちが大声を出さない限り起きないわ
それに、また離れているうちに騒いだら
迷惑でしょう?」
「そう・・・ですね。」
そらは少しだけ、イスを牧田から遠ざけ、
夫人の方を向いた。